技術部の壺の中 — Vol. 112 [社会における『にやり』]

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みのむしクリップ

主に電気関係で仕事をしてきたけれど、気が付いたとき、日本の電機の会社ってほとんどなくなっていた......... そんな需要のない今を 日々生きています。

「おあいそお願いします。」
回転寿司でたまに見る光景。
『おあいそ』は店側の言葉だけど、客と店側双方によく使われている。
うんちく本では、業界用語をここぞとばかりに紹介する。
それは話題としては良いけれど、語彙の説明をするのはナンセンスだと思う。
その言葉を関係しない人が使っても仕方が無い。
生活の中にはいくつも『特別に使われている言葉』がある。
「サビ抜きでお願いします。」
「仕掛けの玉が、すぐ割れるけど。」
「屋上にモノを上げるときは、パラペットを保護して」
「鳩小屋からケーブルを引き込みます。」
「波形のこのヒゲが、異常発振を・・・」

[写真] はと小屋とパラペット

屋上の配管が建物のパイプシャフトに入る部分を『ハト小屋』

[屋上から外壁部分に立ち上がり保護されている部分をパラペット
クレーン搬入や重量物を屋上に上げるときに、よく損傷するのであらかじめ保護しておく]

子供達が作り出す言葉も多い。大昔なら、『MM5』(まじでむかつく5秒前)とか、意味があっても無くても、共通で使う事で仲間意識を深めたりする役割がある。大人が使うから、子供達もいろいろ考えて言葉をつくる。
仲間同士の隠語を作る。
それって、入門試験と同じように、「一定ラインはクリア」という事を簡単に測っている。自分と同系のパスポート代わりだと思う。
そして、それは仲間意識が高い物ほど複雑に階級分けが入る。趣味とかはその傾向が特に強い。車関係でも共通の話題で盛り上がれるかが鍵だ。
「冷却系の能力、上げようと思うんだけど。」
「吸気がイマイチ。」
「下回りの剛性が今ひとつ。」
みたいな、大まかな言葉で、どこまで想定する事が出来るかという連想ゲームだ。冷却って言えば、オイルから、ラジエータ、ウォーターポンプ、サーモスタット、クーラントなどの構成は、当然知っているよね・・・という事がすべて含まれるテストだ。
それも、楽しみの一つだ。

電気系にも、ちょっとしたルールがある。
例えば、部品のフリーマーケットで売られている物、『3K』『4K』とかシールが貼られている。
テレビの解像度みたいだけど、・・・意味は同じか。
3000円、4000円の事を3K, 4Kと表現する。
先輩だと、『OMさん』とか。
「3エリアからきました。」
とか。
Xファイル・ファンが聞いたら、
「ひょっとして、エリア51と関係あるの事??」
なんて、期待してしまうかもしれない。

アマチュア無線関係だと、地域をエリアで表現する。
元が郵政、電電公社だから、電話番号の市外局番みたいな感じだ。
ゴルフでも、釣りでも、いろんなスポーツでも、そう言う聞き慣れない言葉を使うことが、『にやり』とする事項を共有する瞬間なのだ。
以前は、知らない人は知らないとは口に出さなかった。
それが関係者とそうでないものを隔てる子はもちろんだけど、その隔たりが外にストレスを生まない線引きをしていた。
最近は、割とストレートに「何のことですか」ときいてきたり、「いろんな人がいるのだから、そういう言葉は使わない方が良いです。」と発言されたりする。
それに付いては、正しいことだと思う。

業界用語を知っているか、知らないかをはっきり言うのは良い。
知らないことは恥では無い。
専門職でも使う人と使わない人がいる。
そして、その言葉を知らないと表現することも、重要な事だと思う。

自分がどの程度の知識を持っているか、専門用語はそれを無意識に行っていると思う。自分の段位というか、業界での位置を周知してもらって、説明を円滑に進める働きがあると思う。

基本の詳しい説明が欲しいときには、使わない方が良い。
専門家の話を聞く機会は少ないから、聞けるときに聞く方が良い。
業界用語を多用すると、せっかく聞ける場合にそのチャンスを逃してしまう。

だから、業界用語だけを覚えて使うのは良いことでは無いと思うし、うんちくを知っているだけで終わってしまう気がする。

自然に覚えた中で、自然に使う事で相互の理解が得られるし、その言葉の先にある会話で、真に「にやり」とできると思う。

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