あの人

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超私のりこ

「JK文学」と評される乱暴な日常のキリトリが売りの第2期取締役。

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「当たり前のことが当たり前にできるようにする!」
とその先生は大声でみんなに教えてから数年後
わいせつ行為でお縄にかかった。
音楽の部活の顧問だった。
先生にとって
なにが当たり前なことか
質問しなくてよかったと思った。

中学の部活の顧問は
2人いて
もう1人は横領、逃走し
逮捕された。
このような反面教師達に
であえることは、
運がよかったのだろうか。

当時、わいせつのほうの先生は
熱血で、という言葉が似合うような
うるさい声と、体格だった。
それなのにみんなが
厳しいのに優しい、とすごく慕って
部活の実績もうなぎのぼりだった。
その頃の私は
世界を真っ黒に染めてやりたいと思う
墨汁みたいな心をもてあまし
どの先生も分け隔てなく嫌いだった。
だから先生が目の前で逮捕されてくれたら
一生の思い出にしてやった。
でも先生は、
私が卒業してから逮捕されたんだった。

いま先生が
指揮棒をはげしく、あるいはゆっくりと振りながら
私たちの合奏をコントロールしているのを
思い起こす。

どこまでも正しく
どこまでも絶対的に
全部の音を案内していたその記憶を
終戦を迎えた教科書みたいに
黒く塗りつぶすことが
私のするべきことなのか。
その頃の同級生と
そんなことを語り合うこともなく

時間だけがすぎてしまった。

前に、めったに行かない駅で
先生らしき人を見かけた。
少し痩せて、目に力がなく
栄養失調のクマみたいだった。
あの人は、本当はどんな人で
どんな世界を知っているんだろう。
誰もが無関心に行き交う雑踏の中で
男はひっそりと息をしている。

私があの人に
話を聞かせてほしいのは
今なのに。

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コメント

  1. 神谷 英明 より:

    現役高校教師の姉から聞きましたが、先生はそういう事件多いようですね‥‥。

    ところで、
    『墨汁』と『分け隔てなく嫌い』が、好きです