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古い方の『しらせ』の話
白瀬隊長について、何も知ってはいなかった。
そして、戦後すぐの昭和21年に料亭の一室で静かになくなっていたことも知らなかった。
日本の軍人には、上(気ままだった人たち)と下(苦労が報われない人たち)に二分しているように思う。
これは今のサラリーマンが多い時代と終わらない。
会社やそういう組織の類は、仲間内でのつながりで損得が明確だ。
その中にいる者たちは、信じられないほどの恩恵を受けるし、その中にいない者たちは、何の恩恵も受けないし、妨害されるときもある。
組織に属さない者たちは恩恵を受けないだけで、妨害を受けないところは恵まれている。
だからニートもこの類で、順位的には、
・サラリーマン社会の上
・ニート
・サラリーマン社会の下
ということで、おそらくサラリーマンの扱いが悪いグループ(給料がイイとか役職が上とかと関係なく、人間関係の扱いの話)は、ニート以上の劣悪環境で生きているに違いない。
白瀬隊長もそういった待遇に見える。
北方領土(千島列島)では取り残されて2年間越冬。
北極圏探査の予算審議は通ったが、支払われず。
南極探査に使われた船は動力付きの船ではなく、木造帆船で当初の半分の排水量。
全長 33mの船を改造して動力18馬力を搭載。
開南丸という名前をいただいたとはいえ、必要なのはお金だと思う。
そんな瀬戸内海の遊覧船程度の規模で、南極まで行ったなんて、
「南極、なめてんのか」
と言われそうな決死の覚悟の上だったと思う。情熱もそのぐらいそそいていたと思う。
移動中、犬たちは病気で死ぬし、食料はダメになるし、時期が過ぎてタイミングを逸するし、それでも南極に行くが、お金を使い込まれて仲たがいはおきるし、帰ってきたら大歓迎の中、講演会がお金を飲み代に使い、その借金(現在価格で1億円以上)を肩代わりしたりと、全く恵まれていない。
普通なら何十回も心が折れているはずだ。
でも、一つのことをやり遂げる信念を持ち続けたことは、もっと評価されるべきだと思うし、それは生きている内に評価されるべきかとも思う。
借金を講演を行うことで返済したというから、それなりには支持者がいたかと思うけれど、そもそもそのお金分、恵まれていたはず。
大谷翔平の数億円も使い込まれて返ってこないけれど、そういうことを体験しても心が折れないのは、自分自身に信念があるからだと思う。
そんな気分で、旧『しらせ』を見に、千葉に行った。
しかし、海だよ。
船橋から大分離れている。船橋を舟が着く海岸に作ってほしい・・・というぐらい、海が遠かったよ。これぐらいの事で心が折れそうになるよ。
『しらせ』は想像上に大きく、立派な船だった。
新日本海フェリーの200m級の船ぐらい横幅があり、天井もちゃんと頭がぶつからないぐらい高さがあった。
いや、今風の立派な船だ。
ヘリポートも大きく、格納庫も大きい。
実写版 宇宙戦艦ヤマトの船内映像より、はるかに天井が大きく立派だ。
(ヤマトはフェリーの車両甲板を使用した感じ。未来の現存しない乗り物なんだから、ちゃんとスタジオで作って撮影すればいいのにと思う。映像がしょぼすぎる)
艦内の展示や図書室を見ていたら時間が無くて船の外観を十分に見ることが出来なかった。もう少し、よく見たかっと思う。
完全に時間配分を間違えた。
65次調査隊は 2月23日にオーストラリアに到着し、しらせから下船して、飛行機で帰路に着いたらしい。新しいしらせは、旧しらせと、ほぼ同じ規模だと聞く。
充実した装備で、かつてような小舟にしがみついて赤道を横切るような負担ばかりの部分は、今は無くて幸いだ。
調査という過酷なミッションがあるわけだし。
ところで観測船の『しらせ』は、白瀬氷河からとられ名前だが、その元は白瀬隊長に由来する。
初めての南極探検として小さいなりに幾多の時代を乗り越えて生きてきた『宗谷』はすきだ。だから、南極探査の船の名は、「ふじ」よりも、新しい「しらせ」よりも宗谷がふさわしいと思う。
けれど、それは船の歴史の話であり、偉人となると話がかわる。
金銭的な困難、用意された船、多くの困難を重ねて33mの小さな船で南極に向かった白瀬隊長の業績を考えると、調査船の名前は『しらせ』以外にはないのかもしれない。
軍人の名前は付けられないという建前はあったとしても。
[ちょっとかわいい館内にあった段ボール]
[日本南極地域観測隊の文字が・・・]