モノモノしい [04]- チタンスコップ /earthworm expert

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みのむしクリップ

主に電気関係で仕事をしてきたけれど、気が付いたとき、日本の電機の会社ってほとんどなくなっていた......... そんな需要のない今を 日々生きています。

先日、探検部が使っているスコップを見る機会があり、
実物にふれてみた。

[チタン製スコップ : earthworm expert]


スコップの写真は、メーカーサイトに写真使用の許可をいただきました。
スコップについての情報は、下記サイトから。
[ブランドファーマーズ・インク HP]
http://www.earthworm.love/products/

[探検部の社内サイトリンク]
https://neet.co.jp/news/「探検部」設立のお知らせ

または、下記HP右側のバナーから
https://neet.co.jp/project

スコップの構造は、木製のハンドル部分が2つ折りになる。
折りたたみ部分はステンレス、それ以外はチタン製で、
バックルで留めて固定する。
本体部分は中央部をV時にした直線的なデザインだ。
見た目の印象は二つ。
・幅がわりと狭い
・材質の厚みがすごい(1.5mm~2mm厚程度ある)

このぐらいのサイズのスコップは、ステンレス製も目にする。
ステンレス製は、よく使われる素材。
土の滑りが良いく、さびにくい。
ただ、ステンレスは重い。
一度さびるとサビがとれないし、電食も起きる。
(違う金属と触れていると、その部分がさびてくる)
良く目にする形状は、緩やかなR(アール: 曲面、曲がり、面取り)が
ついていて、多くの土がとれるように幅がある。
園芸用に向いている。

一方、山岳用の植物採取には、狭いスコップが使われる。
深く差し込むことや地面が硬い場合に、幅が狭い方が抵抗が少ない。
このチタンスコップもそういう場面で使われるのだろうな。
探検部だし。
幅が狭いので、折りたたんで携帯する時、とてもコンパクトだ。

素材として使われているチタンは剛性が高い。
昔からその特性は注目されている。
偵察用に開発された米軍機のブラックバードも機体に
チタンが使われていた。
今はチタンの性能を多くの人が知っている。
自転車、時計等に使われ、強度の割に軽い。
キャンプ用品にはチタン製が使われるが、
それは『軽い』からだ。
歩いて物を運ぶ登山キャンパーには、重さや体積は
体力の消耗につながる。
だから、キャンプ用のカップは、チタン製で極限まで
薄く出来ている。ペコペコなカップとかよく見る。
剛性があるので、薄くても大丈夫。

しかし、このスコップは厚い。
市販のチタン製品ではあり得ないぐらい、厚い。
2mm程度もある。
つまりは、強度に特化した作りだ。
厚みがあると、土に差し込む時に抵抗になるが、
形状が細く直線的なので、考えられているのだろう。
テント用のV型のペグと似た作りだ。
スコップの先端部には、かなりの力がかかるから
厚い方が曲がりにくい。力もかけやすいだろう。
厚さのあるチタンをふんだんに使っている割には、
鉄やステンレスに比べ大分軽く出来ているのだろう。
値段は、6,000円だが、チタン皿が20cm、0.5mm厚で
1500円ぐらいなので、金額的には妥当な値段だ。

チタンの耐食性は、一般に知られている通り高い。
しかし、この耐性も温度に左右される。
170度を超えたあたりからハロゲン(塩素やフッ素)の影響を
受けるようになる。700度では、窒素や酸素と反応する。
化粧品原料に使われる日焼け止めには、二酸化チタンが
使われている。酸化物はとても安定している。
酸化膜の表面は、腐食から保護するコーティングのような
役割をもつ。

純チタンは煮炊きの食器よりも常温で使う物に向いている。
スコップとの相性は、その点において良いと言える。
耐久性があるので、長期にわたり使い続ける道具に
なるのだろうと思う。


[チタンの材質的なはなし]
どんな物質も万能では無い。チタンは、物質的には安定している。
キャンプ用品の食器によく使われている。
しかし、アルミよりも熱伝導が悪いから、扱いが良くないと
すぐ焦げる。キャンパー向けには、肉の薄い材質が使われる。
一般向けに強度のある厚めのチタン製のキャンプ用品が
売られている。多少ラフな扱いでも変形しないためだ。
コッヘル(火にかけて使う調理器具)は、注意が必要だ。
焦げやすく、洗うのが大変だ。
実際にチタンのシェラカップを使い、弱火で暖めてみると、
どうやっても焦げる。ネットで調べると、多くの方が
焦げると書いている。チタン製の高価なコッヘルは
お湯を沸かしたり、火を使わない調理や食器として
使っている。完全に宝の持ち腐れだ。

チタン製品は、
シェラカップ、ボール、皿、マグカップ、ボトル、
コーヒープレッサー、コッヘル、アルコールストーブなどを
持っているけれど、臭いがあったり厚み、表面処理など、
製品ごとに様々だ。
特に、コッヘルやシェラカップは、火にのせて加熱して使う。
別に汚れても、使い続けて良いのだけど、
アルミ製があるのにわざわざチタンに変えることは
無いと言う事で、コッヘルはアルミ製になった。
ただ、アルミ製品は、最近は痴呆症と関係があるとかで、
一部の人からは忌避されている。
(本当に関係があるのかは、わからない)
コーティングされている物であれば良いけれど、
テフロンコーティングははがれて体内に蓄積とか
問題視されたり、どこまでも不安はつきまとう。

チタンが焦げるというのは、熱伝導率が悪いからだと
思う。熱伝導、電気抵抗、反射率は、金属の自由電子に
由来している。
熱伝導率は、良い順番に(単位: W/m・K)
銀- 428
銅- 403
金- 319
アルミニウム- 236
白金- 72
鉄- 83.5
ステンレス- 16.7 ~ 20.9
チタン- 21.9
木材- 0.15 ~ 0.25
エポキシ樹脂- 0.21

アルミのナベの方が何倍も熱伝導が良いので、フライパンに
使われている。鉄はアルミに比べると数値が1/3程度で、
熱の伝わりがよくはない。アルミの方が良く使われる。
また、銅のナベやフライパンが良いというのも、この
熱伝導に由来する。
確かに銅はアルミよりも大分熱伝導率が高い。
また、チタンやステンレスが、鉄よりも数段低い。
ステンレスの中にアルミを使い、熱伝導と耐食性を
併せ持つ3層構造や5層構造の鍋が商品化されている。
ステンレスの耐食性や光沢と熱伝導の向上を狙った商品だ。
これらの事から、キャンプのチタン製コッヘル(ナベ)が、
いろんな要素を犠牲にして、軽さという携帯性に特化した
物であることが判る。
二重ウォールのカップなどは、熱伝導が悪いと有利だとは
思うが、所詮金属なので、樹脂製のカップに比べたら、
かなり熱伝導は高いので、冷えやすい。
軽さと耐久性に特化している。

逆にステンレスが熱伝導が悪く、重いのに、社会でこんなに
多様に使われているのか、疑問が残る。
さびないことはそのぐらい大きな事なんだろう。
(ステンレスのボルトは、速い回転で締めすぎると、
発熱で簡単にネジ山がかける。外せなくなる。)

電気抵抗率の小さい順位は、
銀、銅、金、アルミニウム、鉄、白金、チタン、
ステンレスの順番。
金属の反射率もこれに準じるけれど、全反射は角度などの
定義があるらしいので、明確には記載しない。
で、この3つの現象は、ほぼ共通性している。

■強度について
強度についての比較は、難しい。
一般的には引っ張り強度が良く用いられる。
鉄筋コンクリートの強度として、金属材の引っ張り強度が
重要になったり、ワイヤーケーブルなど、金属は引っ張ら
れて使われることが多い。
鉄骨の建物は、圧縮や曲がりの応力も働くため、
引っ張りだけでは十分ではない。
曲がりの検査もあるが、検査条件は様々あるらしい。
切断面積あたりのせん断にかかる指針だったり、
ゆがみ基準だったり。
また、大抵が合金で使用されるので、その種類によっても様々。
純チタンが200と言うせん断の数値に対して、
医療に使われるチタン合金の強度は500だったり、
素材と条件とが変わると強度は大きく変わる。
アルミも純アルミとタイヤホイールに使われるアルミ合金は
強度が全く違う。
それぞれの引張強さ(MPa)は、
純チタン – 340~510
医療用チタン合金 – 895
鉄鋼 – 400 ~ 510
ステンレス鋼 – 520
アルミ – 75 ~ 105
アルミ合金 – 540

強度は鉄と変わらないけれど、質量は鉄の6割なので、携帯するスコップには向いている。

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