技術部の壺の中 — Vol. 104 [結局、電源がかなめ]

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みのむしクリップ

主に電気関係で仕事をしてきたけれど、気が付いたとき、日本の電機の会社ってほとんどなくなっていた......... そんな需要のない今を 日々生きています。

アナログ製品が廃れて、デジタル製品になった時に大きく変わったなかに、電源の作り方があると思う。
地味で誰も注目しないけど、デジタル時代に電源は、良くもなり、悪くもなった。
— 良くなった点 —————–
・小さいパッケージで、電源が作りやすくなった
・効率が上がって、熱損失が小さくなった
・周波数が割と自由に変えることが出来るようになった
→消費に合わせて変換効率が良くなる周波数に変えることが出来る。
→ノイズが出ないように高い周波数で変換する事ができる
・LEDパネルの昇圧電圧は、セラミックを使って、機構的なひずみで
高い電圧を出せる仕組みが開発された。
他にもあると思うけど、メリット大きい。
変換時に発生するコイル鳴りも聞こえない。
他に、アンプがデジタルアンプのD級アンプになったため、スピーカーに電源からのノイズが回り込まなくなったのも大きい。

— 悪い点 ————–
それほどない。
・高い周波数のノイズが出ているので、耳に聞こえない範囲で大きなノイズが出ていて、「なんか頭が痛い」なんて症状の原因になっているかもしれない。
・発振が高い周波数になった分、部品の精度が必要になった。
コイルとコンデンサの容量、特性、高速性、耐久性が設計時に正しくないと、それがノイズを発生させる。

他の部品が影響を受けにくくなったけど、それでも大きなノイズが発生しやすくなった。きちんと評価して、数値が合っていると問題がない。
正しくできるか、出来ないかの話。

デジタルのメリット生かせば、とてもコンパクトで理想的だし、そこにはやっぱりトランスやトランジスターで発振させていた時の知識が生きてくる。
リップルノイズを減らして平滑化する事や、電源を使用する回路の負荷を合わせる事が必要だ。
嘘のような話し、昔、液晶パネルのバックライトは冷陰極管(蛍光灯)を点灯するため、700V程度の電圧を必要とした。陰極管が細く長いので、高い電圧を必要とした。(電子が高速で飛んでくるので電極の寿命が短かったらしい。また電極はインジウムが使われていたとのこと。)電流は少ないけれど、管と昇圧回路の負荷があっていないと安定して点灯が出来なかった。
今でもの特性が一致しないと電源側がうまく起きないって事は発生する。
これは直流の話だけど、その元の変圧をしている所の振る舞いが交流だから、起こりうる世界なのだ。

家庭で使われている交流送電は、意外とセンシティブだ。
伝送経路によって、コンデンサやコイルみたいな働きを受けると、波形が遅れたり、進んだりする。その別経路の電源が一緒になったりすると、打ち消し合ったり、強め合ったりで、損失した電気は熱に変わったりする。
まあ、そういうことがおきにくいように、電気を供給するコンセントはメスに限定されていて、オスのプラグから電気が供給されることはない。
けれどそう言うルールがないと、問題も起きる。
日本の同じブロックの発電機は、みんな調子を合わせて動いている。
脱調すると大変だ。

そう言うアナログ的な要素は、いつまでも続いて行くけれど、なぜか無視されがちだ。最近は。
アナログのケアで、ノイズを出さない事は必要な作業。

たとえば、HDMIケーブルの信号は、電圧や電流が少ないので、エネルギーは低いように見えるが、周波数がとても高いのでエネルギー密度は高い。
コネクターには信号にノイズか乗らないように差動信号用のフィルターが入れてあるけれど、この定数があっていないと、逆にノイズがグランドに出てしまう。本来は、信号自体に入ってしまったノイズをキャンセルする仕組みも、逆転してしまう。
グランドに逃げたノイズは、ケーブルのシールドを伝わって、TV、ラジオなどのアナログ機器に影響を出す。
フェライトコアをつけると、ケーブルのシールに乗ったノイズの進行を抑えてくれる。(筒状のフェライトの入り口と出口で作用する)
そんな微妙な事で改善してしまったら、機器のコネクターからのノイズである可能性が高い。
でも、そんなの見ても解らないから、定数が違っているってのも気がつかれない。なんか変だって事で終わってしまう。
これは実際に他社の製品を解析していたときにわかった事件。自分の機材が疑われて、怒鳴られた事が起因。思い出すと、ひどいもんだ。
私は、結構、不幸な木の実を食べている動物なんじゃないかな・・・。
話がズレた。

まあ、そんなアナログ鎮魂歌のように時代は過ぎていくのです。
いくのです。
基板の電源屋さんよ、永遠なれ。
仕事がなくて、死んでる人も多いだろうな。

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