技術部の壺の中 — Vol. 59 [品質-クルマの場合]

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みのむしクリップ

主に電気関係で仕事をしてきたけれど、気が付いたとき、日本の電機の会社ってほとんどなくなっていた......... そんな需要のない今を 日々生きています。

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[クルマ編]
クルマは、不良として許される部分が階層分けされる。
今までは、単一機能や単一製品として、動かないという不具合で判定
されるけれど、クルマの場合は人の生命がかかっているので、不良に
対する対策が不良の低下だけではなく、セイフティーとしての安全策を
複数の方法でとる必要がある。
どこかが不良になっても重度の問題が発生しないように、リカバリー
する機能が必要と言うことで、機能が階層分けされたり、許される
不良率が部分ごとに違うという製品全般のグルーブ。

飛行機との違いは、その安全性の違い。
クルマは、不良が発生しても仕方が無い範囲の製品。
オペレーションもそれに準じて甘い。

でも、不良が発生しても例えば、ブレーキホースがちぎれても、
徐々にブレーキがきかなくなる事を感じて、停止すれば重度のトラブルに
巻き込まれにくい。
止まれなくてもシートベルトやエアバック、別系統のサイドブレーキ、
エンジンブレーキなどで、ある程度リカバリーが出来る。
運行前の点検も、ユーザーの責任範囲で終了。
不良が全く発生しない体制にはなってはいない。

この製品の特徴は、
・部品点数が多く、消耗品の寿命もまちまち
・使用時間に合わせてメンテナンスが必要。
メンテナンスで品質の安定を保つ必要がある。
・機能の部分ごとに不良率の設定が異なる。
(階層別の品質)
例えば、動力関係の耐久は走行距離で、外装エクステリアは10年、
バンパーの樹脂は10年、ゴム、ブッシングも10年とかの寿命や、
ブレーキの信頼性、シートベルト、エアバック、ガラスなどの
衝突安全性に対して、エアコンや内装の信頼性、小物類の不具合は
重度に至らないから、このあたりの基準は違ってくる。
なぜ違うかは、コストバランスを考えて。
安全や基本的な信頼性にコストを集中させて、それ以外は顧客に
合わせて用意する。
・用途や仕向け、グレードによって信頼性や耐久性が異なる。
タクシーの車体は、5ナンバーの特別仕様だし、車椅子が入る基準で
作られているらしい。
F1の場合は、レースですぐ壊れる感じたけど、それは極限で使って
いるから、そこまで耐える仕様になっている。
グレードの高いクルマは、室内の走行音が静かだけど、大衆車は
ロードノイズがひどい。でも、パワーステアリングや坂道発進時に
ブレーキから足が離れても、そのまま位置をキープしていたり、
バックモニターがついたり、発進時の自動トルグコントロールが
標準でついていたり、基本的な所はしっかりしている。

とにかく、複数の信頼性、複数に分かれた機能を複合している製品で、
単一の不具合をリカバリーする事が設計段階で作り込まれている。
これは、部品点数が多くなると不良が発生しやすくなり、それを回避
することにもつながる。
0.1%の不良部品を2つ使うと、発生する不良のチャンスは2倍に
増えるため、単純計算で装置全体では0.2%の不良になる。
1000個の部品で構成されたら、100%の不良になるので、はじめから
部品点数が多い製品ほど、個々の部品の不良率を下げる必要がある。
実際の発生は、偏っているので、はじめから壊れて生産されることは
ないのだけど。

そう言う様な生産後の不良の発生率と時間の関係を表したグラフに
バスタブ曲線という物がある。

生産時に初期不良が発生して、その後品質が安定して、
寿命が近づくとまた不良率が悪くなると言う説明に使う図。
「ものづくり!!」を強調する人の話では、こういう図やツール類が
必ず出されるけれど、理解が必要だ。
そもそも、品質は図の通り維持されるのではなく、図のように
起こることがある、という参考に過ぎない。

品質という物をどうにかすれば、品質が上がる、または、
生産をどうにかすれば品質が上がるという事を聞くが
それはどうにもならない。

製品の品質は、製品の設計品質に依存する。

だから、そもそも製品に一致した基準の設計や品質の良い設計、
そういうことを行った上で成立する。
どのぐらいの品質か、わからないものをいくら選別しても基本的な
品質は向上しない。初期の不良は選別でいくらか排除できたとしても。

生産初期は、テストがされていない状態では、調整不良など
不良率が高いため、それを排除する目的で出荷前にテストを
行う。
バスタブ曲線のはじめの部分の不良率の高いところを工場内で
排除して出荷するという理解だ。

スクーターの生産が中国に切り替わったとき、バイク屋のおじさんが
「今まで2kmぐらいで納品されていたんだけど、
最近7km~14kmで納品されてくるんだよね。
だから数字が多いけど、新品なんだよ。」
って、話していた。
これも、生産が切り替わったので、日本に到着後にダブルで
チェックされたためだと思っている。

バスタブ曲線のおしまいの方の寿命の捉え方は、
あらかじめ設計で決めているが、工場内のQA試験や設計試験、
市場からの情報で、この図を作成し、設計値と実際の寿命が
一致しているかのトレースが必要だ。
寿命の生存率の計算式を算出するのにも必要になる。
このカテゴリーの製品は、どのぐらいの製品寿命か、次の設計の
見込み計算をするときにそう言う情報がひつようになる。

で、この曲線の名前、「バスタブ曲線」は、こうなるのではなく、
トレースの結果がバスタブの形の様に見えるからつけられた名前。
実際は、設計品質でどんな形にもなる。

関連ブログ
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