技術部の壺の中 — Vol. 52 [品質-ガラスの場合]

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みのむしクリップ

主に電気関係で仕事をしてきたけれど、気が付いたとき、日本の電機の会社ってほとんどなくなっていた......... そんな需要のない今を 日々生きています。

[ガラス編]
まずは、ガラスの品質の特徴と、他との違いから。
ガラスは、構造が単純でできあがった製品品質は安定している。
しかし、輸送で割れやすく、扱いで壊れる。でも、壊れるまでは
品質はすこぶる安定。さらに寿命という判断もまちまちだ。
この分野の製品の性格は、3つに分かれる。
[1]半導体の様な製造時に条件をそろえて生産するもの
条件を満たせば安定していて、生産はじめのロットの
見極めが重要。何かを変えると品質が変わる。

[2]消費価値を上げる目的でクォリティーを高くしている物
宝石や貴金属、革製品、装飾品などは、素材の不良率が
低いが、それをさらに選定して品質的な価値を上げる。
それによって高く売れる。
物自体の品質を上げているのではなく、選別によって
厳選していることにより価値(価格)を上げている
選別して長寿命のFlash NAND ROMなんかはこれ。
価格を高く出来ることで、ブランドや会社の信頼度と
原価価値を上げることによるメリットがある。

[3][2]の反動で、選別で落ちたB級品という位置づけの
商品も存在する。結果、
B級品という品質が悪いのかいいのか、売って良いのか?
分からない製品が出る。
B級品出会っても品質上問題はない。そもそもが[2]の
選別は一歩上を行く製品だから。
しかも、このグループは、潜在的に品質のバラつきが
少なく、品質が良く安定している。市場で使われていても
安定しているので、不良の発生も少ない。

ガラスのカテゴリーの物には、こういう特徴がある。
(といっても、私の勝手なカテゴライズです。)
クルマのフロントガラスのように温度で伸び縮みする要素があり、
安全上の問題から寿命を決めていたり、
会社ごとの品質があり、その基準で検査されている。
その結果、製品ごと、会社ごとに違った品質になる。
悪くもない品質だけど、他と比較されたりするから、
必然的にブランド化しやすい。
「靴なんてどれも一緒じゃん。」
って言いながら、ナイキが売れたり。
「モビールスーツは、どれも一緒。」
といいながら、ツノをつけて赤く塗る。
使用に問題は無いけれど、少しでもオーバースペックを
装いたい。それが男のロマン。
ということで、品質以上の何かを提供する事も、
時には必要になる。

何が違うのか、それは、
通常の製品は、その基準は製品そのものが持つ価値と
合致している。顧客要求に一致している。
しかし、このカテゴリーの一部は、
品質要求はクリアー出来ていて、それ以上の顧客要求にこたえる、
もしくは要求されていなくてもハイスペックに誘導するもの
と、言う点が違う。
某カットグラスの会社の基準では、
光をあててひずみがある物をはじいている。
それも、そう言う品質基準で検査しているという演出含めての
商品提供で、品質が安定していて差別化が難しい商品には
良くある話。ボールペン、万年筆、腕時計など、コンビニに
ある100円の商品でも基本的な品質はクリアーしている。
でも、身につける物には、それ以上が望まれる。

そして、また、高い品質から落ちた製品は、
使われずに廃棄されてしまうのかといえば、必ずしも、そうならない。
ブランド品はブランドのマークがついてる物が世の中に出ると
もともとの製品価値を落としてしまうので、廃棄するだろうけど、
ラベルを削ってB級品としたり、袋を入れ替えて、
「あのXXXXと同じ製品」
という売り方をしている所もある。
ラベルが価値だからね。

かつてSONYも他とは違うデザインと作りで、製品を売り抜いた。
ソニーだから大丈夫、という意識は使う方にもあった。
それがソニータイマーと噂される機能を内包していたとしても
ソニーには、顧客からの絶大な信頼があった。
そのうち、どこで狂ったのか、国外で生産した廉価版を
ソニーが売り出したあたりから、その価値が疑問になり、
気がついたらソニー以外もソニーと似たものを生産している
ということになって、違うブランドの選択肢を広げたとも
思う。ソニーの人気については、諸説有るけれど。
まあそう言うこともある。
ガラスのコップは、不良としてはじいても、すぐ原材料に
なるので、まあ、演出要素は大きいな。

で、話変わって関係する品質用語について、
こういう顧客の要求と販売する方のコストバランスは、
「生産リスク」と「消費者リスク」という言葉で表される。
(バランスの曲線をOC曲線と説明される)

過剰に検査をすると不良率が落ちるけれど、その分、
出荷出来なくなる。–[生産者リスク]
ノーチェックで生産すると、生産時に検査のコストはなくなる。
しかし、不良をつかまされる顧客は増える。
–[消費者リスク]

消費者リスクは、生産者にクレームとして帰ってくるから、
簡単に言い切れないし、結局これはあまり意味はない話。
ただ、生産時にどちらにリスクがあるのかを表現すると
そういう分け方になるということ。

この双方のリスクが、どのぐらいの配分だと、バランスが
良いかという話だけれど、一般的には98%の比率がいいんじゃ
ないかと言われている。
不良2%。でも、クオリティーが高いことを求めていると
この比率が99.9%とかになる。
通常の電化製品は、市場での不良率1%程度を狙っている。
工場出荷時の不良が0.3%以下で、市場不良は1%程度になる。
そう言うバランスをOC曲線という曲線で表した図を見るけれど、
不良率が悪い部分を見ても始まらない(客が怒って物が
売れなくなる)から、実際は極限部分しか使わないグラフだ。

関連ブログ
技術部の壺の中 — Vol. 46 [ものづくりと品質]
技術部の壺の中 — Vol. 47 [ミリタリースタンダード]
技術部の壺の中 — Vol. 48 [品質-割り箸の場合]
技術部の壺の中 — Vol. 49 [品質-電球の場合]

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