■技術部の壺の中 – Vol. 131 [SONYも木から落ちる]

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みのむしクリップ

主に電気関係で仕事をしてきたけれど、気が付いたとき、日本の電機の会社ってほとんどなくなっていた......... そんな需要のない今を 日々生きています。

「ハンダ付けできるよね。」
最近ほとんど顔を見せない知り合いから、そう電話が来た。
親友> 友達> 知人> 知ってる人> なんか,いたかも> 知らない人
そういうランク付けの下層階に移行しつつある関係に、何を頼もうというのだろう。そう思って聞いていると、あるyoutubeを見ろと言い出した。まじか・・・。社会的上流市民にいるからと言って、あまり底辺社会の人間を見下さないで欲しい。
そう思いつつ、結局、上流階級に従ってしまうのが悲しい。
見ると、スマホ基板のコネクターをハンダしている動画だった。
「その動画に出ている携帯を持っているんだけど、直してよ。簡単でしょ。携帯送るから。」
まじか。確かにそんなに難しくないコネクターだけど、このyoutubeのお店に依頼すれば良いじゃん。
「そう思ったんだけど、何か修理費 18,000円」するらしく、買い換えを考える値段なんだよね。」
って、言いやがった。
上流社会の住民なら、おとなしく買い換えろよ。
もしくは、修理に出して、倍の値段を支払うぐらいの『羽振リッチ』さを見せろ。
断ろうと思ったら、「今近くにいるから」と、
『来ちゃった』
と可愛く甘える女の子ぐらいの身軽さで、秒で家の下にいた。
マジか!!!! 今時そんな女の子もいないから、今ならストーカーモードな身軽さだ。
仕方がなく、修理することにした。

携帯の機種はSO-04J。
SONYブランドの携帯だ。
ググると、結構たくさんの不具合サイトが見つかる。
なんか、当たり前の様に修理するらしく、もう、おきて当然の現象らしい。
不具合症状は、USB Type-Cのコネクターから、充電ができなくなる現象。
『コードをくっと、右側に押し込むと充電出来ます』とか、何かの儀式的な対応策があったり、みんな悩んでいるらしい。
で、問題は、メイン基板の電源コネクターがクラックで通電しなくなり、ダメになるから、ハンダ付けして対応・・・と言うのが一般的な対処方法らしい。
でもね、
ハンダは良いんだけど、スマホを分解しないといけない。
そっちの方が面倒だ。
仕方が無いから、U-tube見ながら分解を開始した。
ネジの長さが違う物とか、コネクターとか、フレキとか。
断線しそうで、ちょー怖い。分解が一番ハードルが高い。
やっとメインボードが外せるまで、15分ぐらいかかった。これを戻すのも面倒くさい。O型はこういう作業が嫌いなんだぞ!!!
[コネクターの場所はここだ!!]

やっとメイン基板と対面して、コネクターを見ると、まあ、良くあるナイロンの基板間コネクターみたいな物がついていた。
クラックってどんな程度なんだろう?? とピンセットでコネクターの足を押すと、半透明なロウのような物が表面に付いている端子がぐらぐらと動いた。
・・・これってさ、クラックで無く、はじめから付いてないだろう・・・。
脳裏に経験値の浅い走馬灯がぐらぐらと回った。
何か見覚えがある、このハンダ。
ハンダごてで溶けにくく融点が高い。表面にロウのようなコーティング材がある。
耐クラックハンダ(防湿ハンダ)じゃねーか??
主成分がSn-3.0Ag-0.5Cuのハンダで、通常のハンダは、219度ピークのリフローで実装するけど、このハンダは245度前後とちょっと高め。
そして、ハンダの中から特殊な樹脂が出て、端子をまるごとコーディングする。それによって熱衝撃によるクラックの発生、湿気の吸収耐性が強いハンダで、特殊な用途向けに使われる。
部品実装の条件が、N2を使用して酸素濃度を低下した環境で行わなきゃいけなかったり、プリヒート時間と温度を厳守する必要が有ったりと、それを間違えると、コーティング材が基板のパットと部品の端子の間に入って、『触れてるだけ』の状態になってしまう。
確かに、youtubeの動画を見てると、何度もしつこくハンダをしていた。
多分コーティング材が邪魔をして、付かないのだろう。
これは、ある程度高い温度のコテ先で樹脂を溶かさないとハンダが付かない。
ソニーさん、施工をミスっていませんか??
そう思うんだけど。
あと、youtubeでコネクターをそのままにしてつけていたけど、これ、ちゃんとするなら、新しい部品に交換して、基板のハンダを綺麗に取り除いてから、コネクターをつけた方が良いと思う。
コーティング樹脂が邪魔をする事と、別な成分のハンダで合金を作る事になるので、あまり良くない。
Sn-3.0Ag-0.5Cuのハンダだとしたら、融点が結晶状態にはならないバラバラの融点の物質が混ざり合うような融点で凝固するので、それに異物の物質のハンダを混ぜるのは良くないと思う。
この作業で18000円って・・・良い商売だ。
分解、組み立てでなれてくると、ハンダを含めて15分ぐらいでできると思う。
1時間4枚、基板の修理で、時給 7万2千円じゃん。
1日、10時間、40枚修理すると、72万円じゃん。
すげーーーー。日給が月収を超える、超バブルな仕事だ。
とはいえ、一日中こんな作業をやっていたら、気が狂ってしまう。
数枚なら、やっても良いけど。商売になるかな。
今年度、新たにneet株式会社に出資?? 加入する方は、希望者 3名に無償で修理します・・・なんてな。
とにかく、このコネクターをハンダして、無事充電確認ができましたとさ。
でもこの不具合、かなりの台数が不具合になるかと思う。
上の推測が正しかったとしたら、
「救われませんね・・アーメン」

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