通勤電車から降りる人ごみの中「何とか●△■ーーー!」みたいな男の声が聞こえた。
久しぶりのような、毎回のような。
女性が絡まれていたら何とかしないとと思ったけどそうでは無さそうだった。
怒りや憤りのなさからおかしな方向にエネルギーを発散させる輩は珍しくない。
大抵こういう感情を自分で処理できない人間は無関係な人間を巻き込む。
どうやら梅雨の時期というのは身体上もこういった類の鬱屈が酷くなるようだ。
例に漏れなく私もどうもけだるい日が続き、やはり何となく全体的に重苦しい空気がまとわりつく。
こういう時じたばたしても始まらないので流れに委ねるのが吉だなと構えていたら、ある連絡が入った。お世話になっている方からの舞台の誘いだった。
「ハニーさんの観たいものができそうな気がしてます!」
そうだろうなと即決でチケットを予約した。「私も今だって思ってました。」「主催の私が言うのもなんですが私もそう思ってこの舞台を作りました。」
梅雨に抵抗するのをやめたら、すぐに救いの手が伸びてきた。
世の中には良いものと悪いものがある。安易に薄汚いものを出す人間よりも苦しい中でも美しい表現をできる人が好き。
そっちに行けるのは偶然じゃなくて日頃の在り方だと思う。
昔誰とでも仲良くしなきゃと思ってた、人を選別してはいけないと。でも違った。
本当は私が切り捨てられたくないからという弱い気持だったんだ。
今は少し選んでいける自分になった。醜いものを傍に置きたくないと素直に思えるようになった。一人でいいと思えるようになったからかなあ。