私の金魚

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超私のりこ

「JK文学」と評される乱暴な日常のキリトリが売りの第2期取締役。

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小学生の時、お父さんから、
学校で人の悪口を絶対にいってはいけない
と教わった。神様がみているよ。と言われた。
その言葉は、私にとって、
とても怖い言葉だった。
もしも、悪口を言ったものなら
神様からもお父さんからもいっぺんに
嫌われてしまう。
そうしたら、もう自分は生きれないのと一緒だ。
それから私はその約束を徹底していた。
悪口を言わないことが気に入られなくて
友達から文句を言われても
ずっと守り通した。

当時、「ダメ金魚」と名付けた
金魚を飼っていた。
お祭りでやった金魚すくいで
私にすくわれた金魚は
2年も3年も小さな水槽で
すくすく成長した。
なぜ、その金魚がダメだったかというと
別の金魚、「キレイキレイ」という綺麗な金魚を
ひんぱんに追い回していたからだった。
平和主義者な子供時代の私は
「やめなさい」といって
なんども水槽をコツコツやっては
イジメの仲裁にはいり、
「あなたはダメな金魚ね」といって
ダメ金魚は、それ以来、
私からなんの期待も受けないで
ダメな人生をまっとうしてゆく。
小学校6年生になった時、
私は楽しい友達にめぐまれて、
家に友達を呼ぶたびに
「これがダメ金魚だよ」といって紹介し
友達ははっはっはと笑って盛り上がる。
水槽の掃除を親に全部任せっきりで
水は薄黒くなって
その中にダメ金魚は
お化け屋敷の役者みたいにスタンバイしていた。
私は話題のタネになるダメ金魚に
感謝していた。
でもそのころのダメ金魚は
ついに名前の通りだった。
体のウロコがめくれて
顔を下にしていつもうつむいて
ぶくぶくにふとって憂鬱そうに
水の流れに体をゆらすばかり。
お母さんは言った。
「もうダメ金魚、見てるの可哀想だから
ビニール袋にいれてベランダにだしてしまおうよ」
私はその言葉に衝撃を受け
カンカンになって金魚を守った。
水がないと生きていけない生き物に
そんな死刑判決を言い渡せるなんて
大人ってもんは心がないんだと思った。
キレイキレイは綺麗に育った。
でもダメ金魚は結局ダメになった。
親からのひどい言葉を学校の友達に喋ると
みんな腹を抱えて笑っている。
笑い話になる時、私はすごくいい気持ちになった。
ダメ金魚の末路を気にするものは
本当にはいなかった。

「ダメ金魚」。ある日ふと、
なぜダメ金魚という名前をつけたんだろう
と思った。
ダメ人間と呼ばれ続けるのと
同じなのに、私はなぜそれを
ただの遊びにしないで、ずっと続けているんだろう。

ダメ金魚が死んだ時に、もう
ペットにこんなひどい名前をつけるのはやめようと思った。
ダメ金魚は大事に土の中に埋めた。
もっといい名前にしてあげればよかった、と思った。


いつかの夏祭りの写真。スイミーの話っていいよね。

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