池袋にある地方の気持ち

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みのむしクリップ

主に電気関係で仕事をしてきたけれど、気が付いたとき、日本の電機の会社ってほとんどなくなっていた......... そんな需要のない今を 日々生きています。

最近何かと行き来する場所、JR池袋の地下連絡通路。
バイト帰りに通過するこのポイントは、インフルやコロナの感染指数が高いと感じるぐらい人が多い。

その混雑したJR池袋の地下通路の中に、たまに、東北、沖縄、信州、北海道とかの物産が売られる場所が発生する。東北といっても主に秋田フェアーだったり、北海道といっても、『東京から大阪まですっぽり入る北海道のどこの地域』なのかよくわからなかったり、意外と適当ではある。
北海道銘菓といえば、『わかさいも』だろう。
クマ牧場に行ったら、木刀とわかさいもが修学旅行の定番。
・・・でも、今は六花亭が有名だったり、宇宙一のサンパレスも下火らしいし、すでに白い恋人の『石田製菓』は中国人観光客の手に落ちてしまっている。
時代は変わっていくものだ。

最近は沖縄の物産『うちなー』コーナーになっている。
「うちなー」って沖縄の事らしいけど、「うちの町では」とか、他でも使われる。
それは、元々そこに住んでいたから、『内』と『外』を分けていると思うし、この区別は節分の時にも使われている。
内と外。
その紙一枚でも成立してしまいそうな区分が、気持ちの上で大きな意味を持つ。
敵か味方か。
まあ、そこまで深刻な話ではないかと思うけれど、安全な領域か、安全ではない領域か、人の精神にはそういった垣根が、自分のプライベート空間を確保する上でも必要なんだと思う。
そんな存在しないような境界でも、「吸血鬼は招かれなければ中に入ることはできない。」
なんて、話が生まれるように、精神の安定には境界が不可欠なんだろう。
北海道では、自分たちの地域をそんな風には言わず、本州のことを「内地」という。
内地という表現は、かつて満州があったときや沖縄でも日本の本土を表す時に使う。
つまり、沖縄も、北海道も、意識レベルでは日本本土じゃないのだ。
北海道で『あずましい』という言葉は、落ち着く という意味だけど、これは東野国にいるように安定した状態から来るらしい。
北海道は、人の境界の中では、危険な地域。
そう。
開拓した人たちは、明治維新の負け組や貿易、自然災害などで希望を持って北海道にきた。そこには来る理由があったし、戻りたい気持ちも強くあったと思う。
世界ランク的にもグリスリーやシロクマと並ぶ巨大生物=ヒグマがいつ襲ってくるかもしれない。その中で、不安な思いで暮らしていたと思う。
その範囲では、北海道は確実に『外』の世界だった。
たしかに、本州に比べれば、巨大生物は多い。クマやシャケ、エゾシカはかなり大きな動物だ。ヒグマを見れば、本州由来のツキノワグマは、
「ストックでボコれるんじゃねぇ?!」
と思ってしまう貧弱さだ。
逆に昆虫は、スズメバチのような御題なものもいないし、大きなゴキブリもいない。
津軽海峡に国境を感じる感覚は、いつになれば自然になるのだろうか。
いや、考えてみたら、一つになる必要はないのかもしれない。
沖縄がそうあるように、「内地」と「うちなー」の間には隔たりがあって、それは、横浜と川崎にだって、大阪と東京にだってあると思う。
自分たちが『違う』と感じた感覚を持って、外を意識した時に、そこには挨拶から始まる礼儀が必要になる。

北海道と沖縄は、日本の南北端でありながら、日本の中では意外なつながりがある。
・北海道の豚汁は甘い。
北海道は白砂糖の消費量がめちゅくちゃ高い。
つまり、沖縄に依存している。

・沖縄は、昆布の消費量が高いと聞く。
昆布の生産地は北海道だ。

両極端がないものねだりの結果かもしれない。
けれど、気持ちの心意気は違う。
沖縄は、「うちなー」といい、自分たちの土地が、自分たちの住むべき地域として認識している。
北海道は、「あずましい」という方言から、『本来、私たちは個々にはいないんだ』という気持ちが含まれている。北海道の民は、帰りたくて仕方がない気持ちの中で済み続けてきた文化圏。
そういった気持ちで、冬の吹雪の中に立っていると、無性にわびしくなる。
『ここに一人きり』
そんな気持ちが残る。極寒の土地は、人の気持ちも寒くする。
もう何世代にもわたって住んでいるから、そんなことはないのだろうけど、ふぶく夜に雪に囲まれた穴に入って外の様子を見ていると、雪の温かさが、その土地の温かさ、北海道の温かさにも思えてくる。

・・・いや、これは小樽(札幌近郊)での話だけどね。
旭川でふぶかれたら、『あ、俺、確実にしぬわ』って感じになると思うし、地域で寒さは全然違う。
小樽で、-15度はほとんどないけど、旭川なら結構あると思うし、-15度の世界は、デニムパンツで30分外を歩いていると、確実に膝が凍傷(しもやけ)になる。
死の危険を感じる世界だ。
この場所を自分たちの居場所とは思えないよな。
だけど、世代を超えた今は、そこしか知らないし、そこが自分の世界。
いつかは北海道も『うちなー』って言える時が来るのだろうか。

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