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ちょっと大きめのB4版の写真集
キャパの写真集が他にもあったので、借りてみた。
内容は第二次世界大戦終結までの写真と日本に来たときの写真、最後は彼が地雷を踏んで死ぬ最後の写真が掲載されていた。
本の構成は、書き手によって大きく変わる。
この本は大版で見やすく、戦後までなので判りやすい。
ヘミングウェイの入院中の写真など、笑顔も多い。
けれど、第二次世界大戦の末期に部屋の窓辺で頭を打ち拭かれた兵士の写真は、水の様に広がっている物は、オイルのような印象だけれども、オイルじゃないんだなと感じて、白黒の良さを痛感した・・・?気がした。
ショッキングなのは、その映像ぐらいで助かる。
[上條淳士 / sex 30th Anniversary Edition 1巻]
少年兵の棺から、包帯に巻かれた足がのぞいているののも、割りと衝撃だけれども。
全体として、難があるのはそれぐらいで、大体が普通に見れる。
キャパは日本の「毎日カメラ」に、日本製のカメラを使って自由に写真を撮る6週間の企画を依頼されて、日本での写真も多く残している。
この時期のキャパにはすでに「戦場にはもう行かない」と話していたりもする。
一定の地位を獲得したし、そもそも戦場は怖くて嫌いなんだなと、様々な本からそういう傾向は見て取れる。
仕事が無かったから、周囲が求めたから始めた仕事だからか。
そもそも、お金が入ればどんな写真でも良かったのだろう。
写真である必要性すらなかったと思う。
戦後の日本は、洋服を着た男女が東京駅で待っている写真、お年寄りの写真、子供が絵を描いている写真・・・戦後の日本に戦争色はなく、日常のスナップ写真ばかりだ。
だから、日本では人気があるかもしれない。
同じカメラを使って、同じスナップ写真を撮りたいと思うユーザーが増えたと思う。仲間意識と言うか、有名人と同じ環境に立つことで、親近感を得ることが出来るから。
共感を得られるその場所は、戦場ではない。
とにかく、そういうゆっくりとした流れの一冊だった。
キャパが作った会社、マグナム創設の本があり、それを見るとキャバは結構、身勝手に行動したり、戦地には行かないと言ったりしている。
日本に来る話しも、いきなりだったようだ。
もっとも、日本側は宿泊先や機材の用意などすべて行うので身一つで日本に来てくださいという条件でキャパを招き入れたようで、入念に準備をしていたはずだから、キャパが仲間内に話さなかったというのが、実際の事象なんだと思う。
『マグナム』は、横浜美術館に併設されている図書館で閲覧。
この図書館には、『ライフ』という写真本もあり、アメリカの雑誌ライフに掲載された写真を本にした物がある。
当然、抜粋でいろんな写真家達がいるが、キャパの名がついた写真もいくつか見た。ライフ誌においてキャパの位置は高かったのだと感じる。
(この図書館では写真はNGなので、本をコピーした。
今日は雨が降っていて、図書館に3人しかいなかった。
博物館や図書館ってそういう感じで、ひっそりと空気が停止している本棚の間を歩いて、本を探すのが好きだ。だから、人がいない博物館や図書館は大好き。館の人達からすれば、最悪な状況なんだろうけど・・・)
今回、キャパの本を何冊か図書館から借りたが、編集する人によって、テイストが大きく変わる。
キャバと関係を持ったゲルダ・タローとの関わりも、本によって印象が大分変わる。
ある本は、彼女をキャパと対等のように扱い、ある本はキャパの従属の様に扱う。本との所は3才年上だった事から、キャバとしてはお姉様的な女性で、ゲルダ的には共産主義社会の流れで男女平等が広まりつつある世情をつかんで女流写真家として売り出し、地位を固めたい所だったと思う。そういう4年の、わずか4年の時間の中での出来事。
事実はよほどシンプルで、一つの事象しか無いけれど、その場所で個人個人がとらえられる印象は様々に変化して、一つではない。
そして、それを記録する。
だから、単純な事が複雑になって、伝説や伝記として残る。
今だって、事件が起こった事から、本人がどう考えて犯行に及んだかなんて置き去りにして、物的証拠から、周囲の人の推測や憶測、そういう認識が個々に拡散して、事件についてのいろんな要素がSNSで拡散していく。
事実は、もっとシンプルで、もっと静かで、もっと当たり前。
カラーのような色の雑踏から、白黒の様な濃淡だけの情報の減少によって、真の姿のシルエットが見えてくるのかもしれない。
人間関係も、狂気の写真も、そうやって色を殺して正確に事象を見つめることで、本当に必要な情報が得られる気がした。
関連ブログ
2020年指定図書- 「キャパとゲルダ」vol. 1
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