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超私のりこ

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「JK文学」と評される乱暴な日常のキリトリが売りの第2期取締役。
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年末の忘年会で吐かれたゲロが、道端で凍結していた。
私は朝、それをまたいで、バイトに向かった。
私には伝えたいことがある。
基本的にはいつもある。
しかしそれらはよくもわるくも
私にコントロールされることがない。
無視するなよと
そのゲロは、消化不良を起こした私の言葉を
足元で代弁するかのようなどぎつい色をしていた。

この前、とある写真展にいった。
私には写真家の知り合いが何人かいるが
今はそのほとんどと交友をもたない。
そのうちの1人の、写真集が出版されたときいた。
生きることを、テーマにした写真集だった。
記念写真展をぐるり、みて回ると
そこのオーナーは、チョコレートとほうじ茶をだしてくれた。
そこでは、たくさんの人が心を打たれ
泣いた場所であったが
私がぬぐったのは汗だった。

走ってきたのだ。
スマートフォンの修理が間に合わず手元にないことで
このところ、出かけるたびに、道を聞いて回る。
サラリーマン、警備員、清掃員、交番。
その町にどこにでもいそうな人たちが
私の生活に関わってくることは、
ひとつの不自由が呼び起こすにしては大げさなほどの、
自然な人とのふれ合いをもたらした。
私は道に迷って、それからなぜか、走りたくなった。

夕焼けは、町を照らしている。
ぜえぜえいって着くと、展示会場には
そこにいた外人と日本人がかわす
流暢な英語の会話が途切れなく続いていて、
他に音はなかった。

私は、差し出された香り高いほうじ茶のものすごい湯気にひるみ
カラカラになった喉を癒すこともせずに
その写真たちが語る、死を、ただ見つめた。
そしてじっとりとかいた自分の汗をぬぐって
命を感じるのを繰り返した。

夕日は無口に沈んでいった。
それから、電車を2度も間違えながら帰った。

生きようとすることは、私にとって、
伝えようとすることだと思えた。


今年も終わる 。

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