超私のりこ
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こたつぶとんを買うことになった。
うちのこたつぶとんは
何年も前からいろんな色のシミだらけなのに使い続けてしまっていて
見ているだけで、DVを受けている人を見てる
気がするから、
一刻も早いチャリティー精神が家族内から湧き上がってくることが
求められていたのに、汚れても機能するという理由は
みなの決断を先送りに、先送りにさせてきた。
「こたつぶとんを買おう」
私の揺るぎない目を家族は見て、ついに、ということになった。
この目は、もののけ姫でアシタカが旅に出るのを
決断した時と同じ目だったはずだ。
その証拠に、誰も反対しなかったし、すぐに決まった。
あの汚い色にそまっていくこたつぶとんを
今年もまた見るのか、というのは
冬という季節そのもののイメージダウンにつながることに
みな気がついた。
最終的にベージュに落ち着いた安物のこたつぶとんを
両親に見せアマゾンで
届いたそれは、緑色だった。
一同驚愕のその色は、混沌、という言葉を
形容するかのような深い緑で
返品しようか?と私はおそるおそるうかがった。
この色がよかったんだ、とすぐに言ったのは母で、
いや、返品しようと言ったのは父だった。
母は、何かにつけで負けず嫌いな性格なので
好きか、嫌いかよりも守るべきポリシーが他の位置にある。
それを知っている私は父に、
本当にこの色でいいのか、という話をした。
でもこの家での決定権は、だいたいが母の方にあり、
父が持つものは、家長、という肩書きと見せかけの威厳だ。
この場合、ニートの取締役だのと名乗っている私は
後者に近しい。
あれよあれよという間に寒くなったある日、
巨大な緑色が、私たちの居間に大きく陣取るように
のさっとテーブルに覆いかぶさる。
やあ!もう逃げられないよ!緑だよ!
と、それは野太い声を出した気がした。
冬ははじまった。