ニート・ショート・ストーリー 2

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みのむしクリップ

主に電気関係で仕事をしてきたけれど、気が付いたとき、日本の電機の会社ってほとんどなくなっていた......... そんな需要のない今を 日々生きています。

以下、完全フィクションで、実題する団体、人物、ドリンクとは関係がありません。ぺこり。


「ニートドリンクに対抗する、新しい飲み物って必要だと思うんだよね。」話は、いつも唐突に始まる。
「ヒーローには好敵手がいるように、敵がいないとどんな物も成り立たないと思うんですよ。」
そう[突貫工事]は、話し出した。
「それで密かに考えました。ニートドリンクの好敵手を。」
「[突貫]さん、ドリンクに敵とか味方とかないんじゃないですか。」
[突貫工事]はちょっとむっとして言った。
「略さないでくださいよ。敵というより競争相手ですね。外食産業じゃ、名前の違うファミレスを何軒も運営する会社がいるでしょ。あれですよ。ニートドリンクも良いけど、たまには別なドリンクも飲んでみたい、と言う選択肢をまるっと総取り作戦です。」
「はあ、で、何を考えたんですか。」
「ミートドリンク。」
「考えたも何も、それって絶対、語呂だけで言ってるでしょ。」
「速攻突っ込みだな。そんな事はないよ。」
「それにミートって、鶏ガラスープとか、肉団子スープとかをイメージしちゃいますよ。あと、しゃぶしゃぶの後のナベとか。」
「あー、あれ、うまいんだよなぁ。」
と[突貫工事]は、目をつぶった。
「あ、いまナベを想像したでしょ。」
「いや、そんなドリンクというよりは、スープ見たいなイメージは持っていませんよ。」
[突貫工事]は慌てて言う。
「じゃ、どんな飲み物なんですか。カテゴリー的に。」
「栄養系ドリンク。」
「やっぱりスープですね。」
「いや、違いますって!! ちゃんと還元型のビジネスモデルを考えているんです。」
[突貫工事]は慌てて以下の様に説明した。
— 現代社会は栄養過多で肥満が多い。世の中には美味しい物がたくさんあるので、健康に悪いけど「もっともっと食べたい」が、本音。だったら余分な脂肪を吸引すると良いじゃん。と言う発想の元に、とある金沢の大学が、皮膚からの新しい「無痛吸引器」を開発して脂肪を簡単に吸引できる様になった。
また、血液中の糖分を回収するハンドタイプの「シュガーキャッチャー」も開発した。この二つを使うといくら食べても、太らない。
でも、問題は機器の料金と回収した脂肪や糖の処理。
これを生成して、災害時の栄養保存食や栄養ドリンクを作れば儲かるんじゃねぇ・・・って話だった。 –
「でも、[突貫工事]さん、そんなハイテクな商品、技術力の問題があると思いますよ。それに人由来だと感染症も問題になりますし。」
[突貫工事]は、やや待ってましたという感じで、立ち上がって話始めた。
「それが、もうクリアしてるんだよ。富山の製薬会社が、一度加水分解をして、タンパク質やウイルス除去を安く行うプラントを作った。でも、それは、廃液処理装置としてだ。ここがポイント。」
「確かに、温泉の水とかも産業排水だから、下水にながしちゃいけないって聞きますね。」
「そう、だから下水に流せるように処理されていて、その処理は人にも完全に安全らしい。」
「でも、それ、使って良いんですか。それにそんなにうまくいくかなぁ。脂肪回収の機械って高いんでしょ。施術の料金も高くて、人が集まらないでしょ。」
「そう、今までは。この脂肪と糖から、若返りの食品がつくれることが 解り、そのお金で脂肪吸引の値段はドンドン下がっているから、回転率が上がるとコストが圧縮されて、もっと安くなる。」
「それは良いけど、そうしたら、ドリンクだって出来ないじゃないですか。」
「食品に使われるのは、含まれている成分の一部なんだ。それ以外が分離され、その時点でかなり精製されて廃棄される。」
「へーー、なんかうまくいきそうですね。」
「そうだろー。じゃーん。」
そう[突貫工事]がいいなからテープルの上に中瓶を置いた。
中には乳白色の液体が入っている。
「これが、それだ。じゃ、大試飲大会、いってみようか。」
「は、いや、嫌ですよ。人の脂肪なんて。だいたいこれは誰の脂肪ですか。」
「だいじょーぶ。俺の脂肪だ。俺がめしを食って脂肪を作り、その脂肪から俺のドリンクを作る。」
「なんか、想像すると面白そうですけど、だまされませんからね。様は排泄物みたいなもんでしょ。」
「だいじょうぶだって、俺が保証する。」
「そりゃ、あんたは良いよ。自分の物だから。」
「そうなんだけど、誰か一緒に飲んでくれないと、怖いじゃん。」
「こっちの方が何倍も怖い。」
そんなやりとりが30分ぐらい続くが、基本、ニートは押しに弱い。
双方、力づきて、体力回復にいっぱいやろうと言うことに落ち着いた。
「じゃ、『いっせいのせ』で、ぐびって行くからな。」
「いいですよ、もう。寝てるときに、鼻から飲ませるとか言うし。」
「じゃ、いっせいの・・・・」
「んぐっ」
・・・・・・
「あのさぁ、昔あった、液体のカロリーメイト知ってる?」
「いや、知らないっす。」
「そうか・・・・。」
「・・・いや、なんか、まずすぎて、コメントできないですね。」
「そんな事はない。飲み物だと思うから、そう感じるだけで。」
「これ、飲み物ですよね。ドリンク・・・。」
「液体のカロリーメイトより、うまいぞ。」
「だからそれは知りませんって。もうなんか評価が下すぎて、うまいって主張がかすんで見える。つまりはまずいんでしょ。」
「いや、うまい。・・・ン。・・・あえて言おう、うまいと!!」
「何で今、ギレン総長の様に言い直した。」
「だから味付けしだいで、どうにでもなるって。」
「まあ、このぬっとりとした舌触りの悪さは、味ではカバーできないと思いますけど。」
よほど口当たりが悪かったのか、二人とも、それ以上飲むのをやめた。と、
「あれ、・・・なんか体が熱いというか、ほてってきました。アルコールは入ってないですよね。」
「ああ、はいってない・・・俺もなんか熱くなってきた。」
「やっぱ、これ飲んだからですよね。」
「やっぱり活性作用がすごいな。100gでカロリー1万だからな。」
「なんすか、その1万って。一日のカロリーって、2000ぐらいでしょ。5日分ですよね。」
「それを秘密の製法で、・・・ジオンの科学力でぎゅっと濃縮しました。」
「もう、ガンダムネタはいいです。でもこのスピード、やばくないですか。」
「人由来だから吸収も早いんだ。すぐ吸収される。すぐ。」
見る間に二人の顔は、赤くなりたした。行動はそわそわして、落ち着きがない。
「いや、これまずいです。なんか、ぽーっ。こう走っていないと、ぽーっ。」
「俺もやばい。しゃーーっ。全力疾走したい、しゃーーっ。全力疾走いってきまーす。しゃーーーーッ。」
「私もお供しまーーーす。ぽーーーーーッ。」

<<<< しばらくして >>>>
「おい、[突貫]さん、どうすんですか。ダメですって、体が、限界・・・。」
「・・・すみません。ご迷惑を・・・おかけしました。」
「走り始めは『俺、新幹線と競争できるし』見たいな高揚感を感じて、車と競争してましたけど、知らないうちに、筋肉はズタズタですよ。」
「はい、もうボロボロです・・・。」
二人、地べたに寝たまま、話し続ける。
「濃縮してしまったのが、間違いです。」
「ジオンの科学力、なめてました。」
「おい!! まだガンダムネタいうか!!」

<<<< また、しばらくして >>>>
二人は地面に寝そべったまま、動かない。
「[突貫]さん、考えてみたら、これ、栄養食品としてはいけるんじゃないですか。アフリカの飢餓救済とか、そう言う分野で。」
「まあ、適量をウェハースに塗って作れば、できるかな。」
「おお、そうしたら、なんか大もうけできそうな気がしてきましたよ。」
「脂肪1kgから9800Kcalぐらい作れるから、400Kcalの単位でも24個は作れる。一人、3Kgから6Kgは余分な脂肪があるから、100個近く作れる。対象の人口は、1000万人はいるたろう。標準以上の体重の人は。ざっと10億食だ。」
「なるほど、ちょっした都市鉱山ですね。ははは。」

「考えたら、裕福な国の余剰なカロリーが、貧しい国に届かないバランスの悪い矛盾を感じてきた。」
「いや、[突貫]さん」二人は地べたに、はったまま、変わらず話続ける。
「一番の矛盾は、このドリンクの元の『若返り薬』を人の脂肪から作ろうとしているヤツラの理由ですよ。・・・食肉と同じで、街に餌をまき、人を太らせ脂肪を摂取する。そんな壮大な計画を感じますね。太らせることはメリットを生むわけで。」
「いろいろ迷惑かけて、すみません。」
「[突貫]さん、気がつきました?」
「戻ってきたときから、どうしようか、ずっと考えてた。」
「そうですよねぇ・・・・僕たち、いつまで動けないままなんですかね・・・」
そう語らう二人に、関東で今年初めての雪が、優しくつつみ初めていた。

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